不法滞在中の外国人の逸失利益の算定について
東京高裁平成9年6月10日判決は,不法滞在中の中国人が交通事故で第11級の後遺症を負った事案において,逸失利益の算定について以下のように述べ,日本におけると同額の収入を得ることができる期間を症状固定日から2年とし,その後の基礎収入は日本における収入の3分の1として逸失利益を算定するとしました。「控訴人は・・・平成2年5月28日以降は本邦における在留資格を有しないまま日本国内に残留し、本件事故時はいわゆる不法残留の状態にあったものであり,近い将来,本国に帰国しなければならない状態にあったことが認められる。・・・控訴人は・・・不法残留の状態にあり,長期にわたって日本において就労できるとは認められないのであるから,日本国内で得ていたのと同額の収入を得ることのできた期間は・・・症状固定日から2年間であり,その後は本国に帰国した際の収入を得られるものと解するのが相当である。」「中国の労働者の賃金は、上海などの大都市においては高額化していても,地域間格差が大きいことは公知の事実であり,弁論の全趣旨によると,中国の男子労働者の平均賃金は日本の三分の一と認めることができる。」