外国人の逸失利益算定について(最高裁平成9年1月28日判決)
最高裁平成9年1月28日判決は,オーバーステイの外国人が勤務先で就労中,労災事故に被災し,
後遺障害を負ったことによる損害賠償請求の算定における逸失利益の算定基礎収入について
「一時的に我が国に滞在し将来出国が予定される外国人の逸失利益を算定するに当たっては、
当該外国人がいつまで我が国に居住して就労するか、
その後はどこの国に出国してどこに生活の本拠を置いて就労することになるか、
などの点を証拠資料に基づき相当程度の蓋然性が認められる程度に予測し、
将来のあり得べき収入状況を推定すべきことになる。
そうすると、予測される我が国での就労可能期間ないし滞在可能期間内は我が国での収入等を基礎とし、
その後は想定される出国先(多くは母国)での収入等を基礎として逸失利益を算定するのが
合理的ということができる。
そして、我が国における就労可能期間は、来日目的、事故の時点における本人の意思、
在留資格の有無、在留資格の内容、在留期間、在留期間更新の実績及び蓋然性、就労資格の有無、
就労の態様等の事実的及び規範的な諸要素を考慮して、これを認定するのが相当である。」
としました。
そのうえで,「在留期間を超えて不法に我が国に残留し就労する不法残留外国人は・・・
最終的には我が国からの退去を強制されるものであり、我が国における滞在及び就労は不安定なもの
といわざるを得ない。
そうすると、事実上は直ちに摘発を受けることなくある程度の期間滞在している不法残留外国人が
いること等を考慮しても、在留特別許可等によりその滞在及び就労が合法的なものとなる
具体的蓋然性が認められる場合はともかく、不法残留外国人の我が国における就労可能期間を
長期にわたるものと認めることはできないものというべきである。」とし,
原審の判断(被災者が事故後に勤めた会社を退社した日の翌日から3年間は,
事故が起きた会社における収入額と同額,その後は本国において得ていた程度の収入を
もとにして,逸失利益を算定した)を是認しました。